January 7, 2009

小岩へ行くことにした。はじめてでどの電車に乗ったらいいのかもわからない。調べてみると、案外、銀座から近かった。小岩駅の南口を出て、放射状に三筋のびている商店街の左端、サンロードを歩く。何だか懐かしい感じがした。三十年以上前、東京に出てきて最初に住んだアパートの近所、新中野の鍋谷横丁に似ているような気がするけれど、鍋谷横丁がどんなふうだったか、本当のところはまるで覚えていない。なのにそんなふうに考えてしまうのは、東京の西側ではほとんど駆逐されてしまった町の雰囲気が、まだここにぎりぎり残っているからなのだと思う。

年末に『芸術新潮』をぱらぱらと眺めていて、ある作家が小岩の台湾料理店について書いた文章が目に留まった。まず、店内の様子を捉えた写真に一目惚れ。そして「酒飲みの味」というタイトル。年が明けたらすぐに行ってみようと決めた。

外からはとてもやっているように見えないのだが、営業中の札はかかっているから、半信半疑でドアを開ける。通りに面した窓からやわらかな光が入っていて、中は想像したよりも明るかった。七人掛けの丸テーブルがひとつ、四人掛けの小テーブルがふたつ、あとはカウンターにスツールが五脚ほど。ただ、小テーブルのひとつは椅子に荷物が置かれ、ビニールクロスもかかっていない。カウンターにも酒瓶が並んでいて、そこで食事を摂れるようには見えなかった。中央にある灯油ストーブの上の薬罐がしゅうしゅうと威勢よく湯気を噴いている。扉にいちばん近い小テーブルに席をとった。丸テーブルでは老夫婦が酒を飲みながら食事している。テーブルの上にあったA4サイズのメニューに、表裏あわせてちょうど100種の料理名が書いてあり、1番から100番までの番号がふられていた。さらに壁に貼られた紙には、101番から120番までのメニューが手書きで。貼り紙の隣に緑色のプラスチックボードが掲げられ、そこに「本日のサービス品」が5種類。店の狭さに似つかわしくないほどの品数の多さだ。昼だったしひとりだったから酒は諦めて、魚醤炒飯と水餃子を注文する。魚醤炒飯は、玉葱と玉子と焼豚だけのこの上なくシンプルなものだった。しかし味は複雑で一口食べればまた一口すぐに欲しくなる。残り少なくなったところで水餃子が運ばれてきた。白菜が入ったスープは淡いのにしっかりとした旨味を感じるし餃子はぷりぷり。実に美味い。締めて1200円だった。

それにしても、隣の老夫婦は相当の健啖家である。あれだけの皿を平らげているのに、「牛スジ煮込み丼をひとつ、大盛りで」と、まだ食うつもりだ。はて、丼ものなんてあっただろうか。老夫婦の向こう側に黒板が見えた。そこに定食が全部で11種類。さらに横に紙がつけ足してあり、丼ものなど8品が書き加えられている。この店、ひとりでは絶対に歯がたたない。次回は助っ人を誘って夕方に来よう。

 

楊州飯店 東京都江戸川区南小岩8-20-9