チェンマイに滞在している間に食べておきたいものを紙に書き出したら、そのリストはかなり縦長になるだろう。新しい食堂をなかなか開拓できない理由はそれに尽きる。「エンプレス・ホテル」から少し南に下がったあたりにイスラム寺院があるのだが、そのすぐ近くのカオソーイ屋がものすごく美味いらしい。ナリスさんから話を聞いたのが帰る直前でなければ、いろいろやりくりして試しにいったはずだ。しかし残念ながらその余裕はもうなかった。空港に向かうときにその店の前を通ってもらい、場所だけ覚えておいた。
食べておきたいものリストの上位にあるカオソーイは、「ラムドゥアン」という店で食べることがいちばん多い。何故なら、リストの中にもうひとつ、ここでしか食べられないものが含まれているからだ。店先にふたつ並べた七輪の上で焼かれるワッフルで、正式な名前はカノム・ランプン。いつもは「カノム」と注文する。ぼんやりとした甘さがいい。着いた翌日にもカオソーイとカノムを食べにいったのに、帰る前日、また「ラムドゥアン」に出かけた。ただ、カミさんが、今日はそんなにお腹が空いていないと言うので、カノムはやめてカオソーイだけ頼む。勘定を済ませて外に出るとき、七輪の横のバットにカノムが並んでいるのが目にとまった。ビニール袋に入ったものもある。そうか、テイクアウトすればいいのだ。どうしていままで思いつかなかったのだろう。
三時のおやつにホテルの部屋でカノムをぱくつく。いつも、カオソーイと一緒だったから気づいていなかったけれど、ココナツのスライスが生地に入っていた。次にチェンマイに来るときは、「ラムドゥアン」でカノムだけ買って、カオソーイはイスラム寺院の近くで食べることにしよう。食べながらそう提案したら、カミさんが、ラムドゥアンでカノムだけで済ますなんて絶対にできるはずがないと笑った。そのとおり。でも、それでは新しい店にはいつまでも行けないままだ。